1957年に作られたスエーデンの監督イングマル・ベルイマンの作品。
これが日本で公開された時の雑誌『映画芸術』での特集も読んでいて、その後も何度か予告編を見ていたので、本編も見たいた気でいたが、実は見ていなかった。
中世のスエーデン、十字軍から戻った騎士が、故郷の家に戻るまでに経験する不思議な話。
その意味では、徒歩によるロード・ムービーでもある。
冒頭に、死神が出てきて、騎士にチェスを挑み、「お前が勝てば生きられるが、負ければ死だ」と予言して消える。
各地を廻っている旅役者一座(といっても男2人に女一人の3人にすぎない)は、村で喜劇を演じるが、村人は役者を嘲笑するだけでまったく受けない。
座長は、女に色目ばかりを使っていて、鍛冶屋の好色な妻と駆け落ちしてしまう。
その退屈な劇に、キリストの受難劇を演じる教会の行列が現れ、村人はそれに熱狂してしまう。
この受難劇のパレードの迫力、衝撃は圧倒的である。
騎士は、結局芝居の一座と一緒に旅することになるが、村の居酒屋での村人の下品な乱痴気騒ぎ、木に登って逃げた座長が、死神に鋸で木を切られてしまい墜落死する件も笑える。
ついに故郷の家に着くと、妻は騎士を憶えているが、「年をとったわね」と言う。
そして、振り返ると死神が来ている。
最後は、能天気な役者が、妻と海岸で皆が手を繋いで輪踊りしている男女の群れで、そこには劇中で死んだ人たちがいて、もちろん騎士も。
白と黒のコントラストの強い画面の力は圧倒的で、非常に素晴らしいイメージの喚起力を持っている。
これを見ると、この死へのイメージの強さは、1957年当時、ソ連とアメリカの原子核競争の最中で、いかに欧州のインテリに世界滅亡の恐怖感があったかがわかる。
黄金町シネマジャック