『五弁の椿』

この有名な映画を初めて見た。
公開当時、フジカラーの本格的使用の大作で大いに宣伝されたが、岩下志麻が父(加藤嘉)を苦しめた悪人たちに復讐するというテーマがとても大時代に見え、見る気がしなかった。

今見るとセット(美術は『七人の侍』の松山崇)がすごい。
また、原作が山本周五郎、脚本井手雅人、監督野村芳太郎、カメラ川又昂、音楽芥川也寸志、主演男優加藤剛と、後の『砂の器』と全く同じか、同系統のメンバーであることが分かる。
『砂の器』は、原作が同じ大衆作家・松本清張、脚本も同じ黒澤スクールの橋本忍と代わり、主演は丹波哲郎の大芝居になるが、監督、音楽、カメラは同じ。
やはり、名作(『砂の器』が名作かどうかは、私はかなり疑問を持っているが)は幾つかの積み重ねの上に初めて出来るものであることがわかる。
いきなり寄せ集めのスタッフ、キャストでは歴史に残るようないい作品は出来ない。ということは、今の日本映画には名作が出来る状況がない、と言うことになる。

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